「モンロビア行きの列車」

<2009.07.01>

 

終戦から間もない頃、ニューヨークに一人の女子留学生
がいました。
体調が思わしくないので診療所で診察してもらうと、
重度の結核で早く入院しないと命が危ない状態でした。
そして、設備が整っているロサンジェルス近郊の
モンロビアの病院に行くように言われたのです。
しかし当時、ニューヨークからロスまでは大陸横断鉄道
で5日間かかります。
彼女はそんな長距離を旅するお金なんかありません
でした。
でも死ぬよりはましだと、彼女は恥をしのんで事情を
留学生仲間に打ち明けとところ、友人達は快く列車代を
カンパしてくれました。
しかし、食料も5日分必要なのにやっと集められたのが
3日分でした。
3日目の夕方、とうとう食べるものが無くなり、最後の
お金で車掌さんにジュースを頼みます。
車掌さんは彼女が重病である事に気づき

「ジュースは私のおごり」

だと彼女に渡します。
翌日、これは食堂車からのプレゼントだと言って

「サンドイッチとジュース」

を彼女の為に持ってきてくれました。
それだけではありません。
鉄道省の本部に電報を打って、彼女の為に停まる筈の
ないモンロビアに停車するように、必死に懇願しました。
その熱意が通じました。
4日目の夕方、車内放送で

「明日の朝、停まるのはロサンジェルスではありません
 重病の日本人の留学生の為にモンロビアに臨時停車
 します」

と放送されると車内中が歓声に沸いたそうです。
翌朝、モンロビアに着くと、そこには既に車椅子を
用意した数人の看護士さんが待機していました。
そして後ろを振り返ると、窓という窓が開けられて、
乗客が身を乗り出して何かを投げています。
それは何かというとドル紙幣に名刺やメモを巻きつけた
ものでした。

「少ないけど何かの足しにしなさい」

「困った事があったら、私を頼って来なさい」

「あなたが早く良くなるようにこの列車の全員が祈って
 いるから大丈夫だ」

という暖かい言葉とともにそれが舞って来ました。
彼女はすぐ近くに止まっているはずの列車が、もう涙で
見えなくなってしまいました。
それから彼女はすぐ治療を受けましたが、退院まで
3年間かかりました。
その間、毎週のように見舞い客が来てくれましたが、
それもあのときの列車の乗客でした。
そして、3年間の入院を終えて莫大な入院費を払おうと
したら、すでに匿名でお金持ちの人がすべて支払った
あとだったのです。

*--------------*

これはアメリカで本当にあった実話だそうです。
終戦直後だったので日本人に恨みをもっていた人も
いたかもしれません。
でも人種を超えて、人として、なんとかあの女性を
助けたい、自分にできることをしてやりたいと、車掌を
始め多くの人が手をさしのべてくれたのです。

以上

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                       ロッキー藤田

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